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ミュシャ展が想像以上によかった話(でも残念ながら東京展は終了)

 先日行った『ミュシャ展――パリの夢 モラヴィアの祈り』が、なかなかよかったんだけれど、気づいたら東京展が終了していたので、本日感想を書いておくことにする。
 残念ながら東京は終わってしまったけれど、6月からは新潟で、その後も松山、仙台、札幌と巡回するようなので、ミュシャ好きもしくは興味のある方は是非行ってみてほしいです。

 期待していたよりもよかったというのが率直な感想なのだけれど、先ずはよかったところとよくなったところを挙げてみる。

【よかったところ】

  • 一般的に知られている作品以外、特に祖国であるチェコやスラブ民族をテーマやルーツとした作品が多く展示されていた。
  • 資料的価値が高いと思われるものが多く展示されていた。(習作や写真、ミュシャのデザインを採用した製品など)
  • ミュシャの思想や人生を感じ取れる展示内容だった。
  • 展覧会の図録が安い。2,000円!

【よくなったところ】

  • 会場(前売券があってもチケットを引き換えなければならなかった。混雑具合に対して、導線や解説の設置箇所など、もうひと工夫ほしかった。グッズ売り場でも会計20分待ちとか……)
  • (欲をいえば)スラブ叙事詩の背景となる解説がもっとあるとよかった。一般的な日本人の世界史知識ではぴんと来ないかも。

 よくなかったところは、まあ要望も2点出してますけど、本当に会場、これに尽きます。六本木ヒルズ森タワーでの展覧会はストレスを感じずに見られた例がないので、ある程度集客が望めそうな場合は他所でやってくれればいいのに、と思う。ちなみに次はハリー・ポッター展だそうで。何だかなあ。
 ちなみに、外国人客もちらほら見かけたので、各国語とまではいかなくても英語解説くらいはもう少しあってもよかったかもしれない。これは東京展だけの課題かもしれないけれど(六本木は外国人が多いので)。

 そして、よかったところ。今回はこのよかったところが期待を上回っていた。
 展覧会の宣伝パンフレットには「あなたが知らない本当のミュシャ。」という煽り文句が書かれている。これはなかなかよいコピーだったように思う。今回、勿論有名どころのリトグラフなども展示されていたけれど、全体としてはミュシャのルーツに重きを置いた内容となっていたから。
 ミュシャは、美麗でイラストタッチの作品が有名となっているが故に、とっつきやすいけれどその先は知らないという人も多いんじゃないかと思っている。だから、もしかしたら、今回の展示内容は途中から退屈だったという人もいるのかもしれない。でも、ライトファンの中でも多くの人は、ミュシャってこんな絵も描いていたんだ、こんなルーツがあったんだ、と新たな発見をして帰れたんじゃないかな。
 あまり知られていない作品も含めてミュシャ作品が好きな私としては、その点で非常に満足できた。
 また、宣伝ではないけれど、展覧会カタログが2,000円とかなり手にしやすい価格なので、ミュシャ好きな人と興味を持った人は買ってみていいんじゃないかと思う。

 そして、以下は個人的な感想。
 私は『百合の聖母』という作品が好きで、今回実物を目にすることができて本当にうれしかった。民族衣装を着た女の子の衣装の紋様は、印刷物で見ると精緻な印象があったけれど、実際には筆のタッチが感じられたりだとか、実物では聖母はより幻想的に、少女ははっきりと存在感を持って描かれていることが解ったりだとか、発見もあった。宗教画なんだけど、純粋に絵として好きだと、改めて思った。
 スラヴ叙事詩の一連の作品は、さすがに日本までは来ていなかったけれど、取り上げられていただけでもうれしかった。今回は映像での紹介だったので、もう少し詳細な解説が聴けたらなあという思いはあったけれど。そして更に、ミュシャが祖国のために残した作品――壁画やステンドグラスも含めて、それらについてはまだ知らないことでもあったので、新たに知ることができたのもよかったし、より一層ミュシャの作品を味わい深く見ることができるようになったと思う。

 繰り返しますが、次は新潟、その後は松山、仙台、札幌と続くので、行くかどうか迷っていたら是非。少しでも気になっているなら、絶対損にはならない展覧会だと思います。